公益社団法人名古屋市獣医師会

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防災・減災に興味ある?

第4回

「自宅で被災したら?動物病院に参集できる?」

 

 

前回のコラムでは、動物病院が周辺地域と繋がりを作ること=防災・減災につながるとお伝えさせて頂きました。

 

今回は、個々の動物病院スタッフにフォーカスを当てたいと思います。

「自宅で被災したら?動物病院に参集できる?」

今このコラムを読んで下さっている皆様の脳内は、どのようなシミュレーションをされましたか?

先日動物支援ナースの中で、被災経験や被災地支援を行った隊員の経験を聞く機会がありました。

自身と家族の安全が確保できてから動物病院へ向かったらしいのですが、停電で信号機がついていなかったそうです。

発災時間にもよると思いますが、大切な家族の安否と安全が分からない限り「仕事どころではない」がスタッフの正直な気持ちだと考えます。

 

また家族と共にいる時間の発災であったとしても、どのタイミングで参集すれば良いのか、動物病院までの道中は安全なのか、判断に困る選択をしつつの参集になることが予測されます。

 

では迅速に判断し、安全に参集でき、動物病院の早期復旧を目指すためには、どのようにすれば良いと思われますか…?

 

それには、動物病院の事業継続計画(BCP)に、「参集基準」を組み込むことが重要であるとお伝えしたいです。

 

 

「参集基準」を決めるには、動物病院の被害想定を行う必要があります。

 

ハザードマップにて調べるのは、もちろんのこと行政が示している被害想定も参考にすると良いです。お住まいの地域の行政ホームページにアクセスしますと「地震被害想定調査報告書」などと書かれているものが閲覧できます。

 

主に「地震」による被害想定が多いのですが、大雨や台風などの被害想定がされていないのは、事前に避難を検討できる災害であるからとも言えます。

被害想定から読み取るのに重要なのは、発生予測されている地震が動物病院の場所とどのように関連しているのか、また地震によって発生するかもしれない液状化や津波、地すべり等が、どのような被害をもたらすのか、そういったことをスタッフ全員で知ることから始めるのが、参集基準を作る一歩となります。

 

それができましたら災害発生時の動物病院の「最悪の状態」を書き出します。

例えば、津波が1時間後に押し寄せる地域に動物病院があり、津波水位は5mが予想される。

垂直避難水平避難の必要がある。

しかし入院舎は満室。しかも地震は夜間に発生し避難のための人手はいない!

などの状況を設定していきます。

 

 

そして今回は「参集基準」ですので、最悪を想定した場合、1時間で津波が来る。

 

近所で夜間来ることができるスタッフがいたとして、入院舎の動物たちを避難させられるのか、その道中に危険はないのか、また入院舎の動物たちはあきらめ、スタッフの命を優先するのか、その場合預かり書に、飼い主の一筆が必要なのではないか等、スタッフ全員で「最悪な状況の最善」を決めます。

そうすることで、発災時の参集を各々が判断できるようになります。

 

これらを決めた時に、最も重要なことが1つあります。

 

「参集免除規定」も作成することです。

 

動物病院に行かなかったために発生するスタッフのグリーフは、大きな心の傷となります。

 

命と家族を最優先にすることは、もちろんですが、

職員自身の事情(妊婦、健康状態)

家族の事情(乳幼児養育、介護中など)

自宅が遠い

 

といったことに加え、

そもそも災害時は、事態が落ち着く3日後まで動物病院へ参集しなくてよいなどと決められれば、実はシンプルかもしれません。

でも医療を提供している時点でそう簡単な話ではありません。だからこそ基準や規定が必要とも言えます。

 

次回も、引き続き個々の行動計画、防災・減災計画にフォーカスしたコラムをお届けします。

 

お楽しみに