公益社団法人名古屋市獣医師会

メニュー

防災・減災に興味ある?

第3回

「コロナ下での避難を考える!」

前回のコラムでは、防災・減災は検討するプロセスが重要と言われていること、スタッフ全員が「じぶんごと」にできる、動物病院での災害対策の概要をお伝えさせて頂きました。今回は、より詳しく現実的な防災・減災を考えることができましたらと思います。

題目にあげさせて頂きましたが、新型コロナウィルス感染症は、避難所の在り方や、防災・減災対策にも大きな影響を与えています。

避難所における過密状態を避けるために、行政ができるだけ多くの避難所の開設や、民間宿泊施設、学校や研修施設などを避難所とする協定を結び始めています。

 

熊本の動物関連の専門学校が、熊本市と協定を結んだり1)

山口県の光市では4つの動物病院が、ペット同行避難所の運営協力の協定を結んだり2)

 

と獣医療も例外ではありません。

皆様の動物病院では如何でしょうか?行政や地域との協力を視野に入れて防災・減災対策を検討されていますか?

 

協定を結ぶことは、専門職として可能な範囲での協力を行うこととなりますし、動物病院が被災しても、しなやかに復旧し他を支援できる状態に持っていく、減災対策が重要となります。いち動物病院が担うには、少々困難だと感じられる方もおられると思います。

しかしデメリットばかりではありません。

 

市と協定を結ぶということは、災害発生時に行政の協力が得られます。災害救助法が適応になる、県や国が動くような大規模な災害が発生した場合、遠方から指定避難所に送られてくる物資支援などを動物病院が受け取ることも可能となります。

 

また「災害支援の仕組みを知る人材」との繋がりができることや、災害訓練への参加は、動物病院にとって大きなメリットだと考えます。

 

 

これまでの大規模災害を経て、「ひと」の支援の仕組みは、整えられてきました。しかしながら「ペット」の支援の仕組みは、当然のごとく災害救助法には含まれず、地域防災計画にて、市や獣医師会が協定を結んでいる所もありますが、まだまだその仕組みは確立されていません。また基本的に「ペット」の防災・減災は、飼い主責任とされており、ボランティア支援に頼るところが大きいのも現実です。

 

動物病院に関しても同じではないでしょうか?

 

人医療では、災害救助法での国や県の要請に従い、病院支援に災害派遣医療チーム(DMAT)などが派遣され、3日後から災害支援ナースなどが、被災病院の支援に入ります。しかしそのような仕組みは、獣医療にはありません。

 

ではどうすれば良いかと申しますと、

獣医師会や動物愛護団体、自主防災組織やご近所さん、飼い主さんと、事前に協力関係を結んでおくことが現実的です。

 

動物病院スタッフ全員で、防災・減災対策を色々と検討したとしても、

大規模な災害を想定した時に、マンパワーが圧倒的に不足することや、ライフラインの設備なども不十分であると感じるのではないでしょうか?そこを補う視点として、周囲から得られる支援は、大きいと思います。また災害のしくみを知る方々との繋がりも、どこかモヤがかかっているシミュレーションをリアルな現実にしてもらえると考えます。

 

次回は、個々の行動計画、マイタイムラインなど防災・減災計画にフォーカスしたコラムをお届けします。

 

お楽しみに

 

参考資料

1)朝日新聞「災害時こそペットと一緒に 専門学校が避難所に」2021.05.27

https://www.asahi.com/articles/ASP5V6W9ZP5VTLVB008.html

2)新周南新聞社「光市・災害時用に同行避難所開設 4動物病院が運営協力」2021.07.06