防災・減災に興味ある?
第2回
「じぶんごと」になっておられますか?」
災害…「じぶんごと」になっておられますか?
日本は災害大国であり、全国どこに住んでいても身近になっておられると思います。その上で、動物病院ではどのような備えを行っておられますか?
先月自身の修士研究で、動物診療所における「災害時の対策・対応計画」の実態調査を行ったことを少し触れました。動物病院のハザードマップの把握率は8割と高く、これをもとに事業継続計画や災害対応マニュアルを作成していますかという問いには、1割も満たない結果だったとお伝えしました。
他にも備蓄対策は、どの動物病院も行っている傾向がみられました。そして災害時の地域との連携はゼロ、連携していても獣医療関連のみという結果や、災害対応の研修や災害訓練の参加も1割未満という結果でした。皆さまの動物病院にも当てはまっていますか?
これらの背景には、
- ・約64%の動物診療所が1人獣医師である1)
- ・1人獣医師に対して動物看護師2~3人体制の動物診療所が53.6%約半数以上
- ・その他のスタッフを加え一病院あたりの従事者数は約5人2)
という、人医療の一般診療所に比べて小規模であることが一番の要因と考えています。皆さまも「人数が少ない」「診療だけでも手一杯なのに」と防災減災どころではないかと思います。実際、習ってもいないことを現場で実行することは難しいです。更に人医療のように、備えることや計画を立てること、訓練などが法的に義務化されておりませんので、各々の動物病院に委ねられている状況でもあり、そこに国費は投入されていません。
通常業務に追われていつ起こるかも分からないのに、時間を割くことは難しいと考えます。ですが、それで良いとは思っておられる方は少ないはず。できるうる対策を可能な範囲でと行っているのが、「ハザードマップの把握」や 「備蓄」の結果ではないかと私は考えています。
敢えてもう一度お聞きします。じぶんごとになっておられますか?実際に被災されたならば、事前に備えておけば良かったと思うはずです。
では今からでもできる備えとして2つお伝えしたいと思います。
1つ目は、スタッフ間で、毎月テーマを決めて「防災・減災」についておしゃべり場を設けて下さい。ランチタイムなどラフな感じから導入されて下さい。
必要なテーマは、
- ① スタッフの参集基準、避難などの様々な事案の動物病院の基本方針
- ② 気象などの情報収集方法と連携機関への連絡方法
- ③ ハザードマップを含めた被害想定
- ④ インフラの確認
- ⑤ 避難方法とリスク・安全性
- ⑥ 関係者への広報方法
- ⑦ 災害訓練などの実施計画などなどです。
その上で2つ目として、
各スタッフに合った「災害時の役割」と「行動計画」をスタッフ自身に考えてもらい、それを書き出し全員で周知することです。
「うちの動物病院では、こうする」という目標を立て方針を決めるだけでも、またメモ書き程度に書き出しておくだけでも、発災直後の一歩が変化します。防災・減災は、そこを検討するプロセスが重要と言われます。どうぞスタッフ全員が「じぶんごと」にできるよう動物病院での災害対策を行って下さい。
今月は概要になりましたが、来月からは、各項目にスポットを当てて、更に足元の防災・減災を考えることができましたらと思います。
引用文献
1)農林水産省.小動物診療獣医師数及び小動物診療施設数の推移
https://www.maff.go.jp/j/council/zyuizi/keikaku/attach/pdf/r1_2-9.pdf
2)日本動物看護職協会.動物看護師の勤務実態に関するアンケート調査.2020.07
http://www.jvna.or.jp/wpcms/wp-content/uploads/2020/06/jvna_20200701_report.pdf
参考文献
1)東京保健福祉局大規模地震災害発生時における医療機関の事業継続計画(BCP)策定ガイドライン
2)American Veterinary Medical Association.Guide to Writing a Veterinary Practice Emergency Plan.
https://www.mvmacharities.org/uploads/1/1/6/7/116792071/avma_guide_to_writing_an_eme.pdf
3)日本獣医師会.災害時動物救護の地域活動ガイドライン