防災・減災に興味ある?
第10回
災害時におけるシェルターワークについて ②
前回の災害時におけるシェルターワーク➀の続きです。
4.新しい飼い主を探しをしよう!
本当の飼い主が見つからず、公示期間も終わったあとは、新しい飼い主を探すことになります。
その際には、以下の点を十分説明し、ご理解いただいたうえで引き取っていただくことになります。
1)本当の飼い主が見つかる可能性
時間がたってから、本当の飼い主さんが見つかることがあります。
その際には十分相談し、面会をさせていただくことを了承したうえで引き取っていただきます。ここで所有権について話し合うことになります。
2)年齢などが不明
保護された動物たちの年齢はわかりません。
獣医師や動物看護師による推定であることをご了承いただくことになります。
3)シェルターと家庭は違う
シェルターでの行動が、家庭に入ると変わることがあります。
事前の面会とは違う行動があることをご理解ください。
4)これらの注意事項のためにも、トライアル期間を設けます。
10日前後は正式譲渡とはせず、ゆっくり検討してもらうことが大切です。
5.日々の運営に必要なものは?
1)スタッフ
獣医師・動物看護師・ドッグトレーナー(インストラクター)がいてくれるととても安心です。
ボランティアではなく、雇用できるとよいでしょう。
ボランティアさんは毎日必ず集まるとは限りません。
たとえボランティアさんがいない日にも最低限のお世話ができる人材を確保しておきましょう。
ここでの動物看護師の役割は多岐にわたります。
実際に東日本大震災でのシェルターワークにおいて、私が担った役割は以下のようなものがありました。
- ・動物のケア
- ・清掃
- ・しつけ、トレーニング
- ・ボランティアの登録管理、指示、コーディネイト
- ・飼い主のケア
- ・譲渡のマッチング
- ・広報
- ・経理
- ・ほかにも数えたらきりがありません
2)ボランティア
スタッフだけで最低限運営できる能力が必要ですが、そこにボランティアの皆さんの協力があると、最低限から最高の環境へグレードアップできます。
主に清掃、動物たちの馴化、お散歩等がボランティアさんの役割です。
また、運営していくにしたがって、「ここに柵がほしい」「ここにリードをかけるフックがほしい」など小さなDIYが増えてきます。
設備の補修等が得意なボランティアさんも貴重な存在です。
3)建物
緊急災害時のシェルターは、一から建てることができない場合が多いので、シェルターとして徹底的にこだわることはできない場合があります。
既存の空き家や倉庫などを使用する場合があるからです。以下の点に注意して物件を探します。
- ・走防止対策がしっかりできる➡風除室がある等、二重ドアがあると安心です。
- ・空調設備や上下水道などが整備されている➡暑さ寒さ対策と衛生管理が必須です。
- ・保護直後や体調不良な動物を隔離できる➡保護直後の経過観察ができる部屋があると感染症に対応しやすくなります。
- ・出入口が二か所ある➡お散歩時に一方通行で出入りできる環境だと犬同士のトラブルを避けやすくなります。
4)物資
各種ケージが大量に必要になります。
猫の3段ケージ、犬の大型ケージ、フリースペース用のサークル等絶対に必要になります。
その他、飼育に必要な消耗品(フード、ペットシーツ、猫砂等)は枚挙にいとまがありません。
これらは寄付を募ることが多々あります。
5)寄付
運営の資金や物資は、ご寄付に頼ることがあります。重要なことは使用目途を可視寄付化することです。
いただいたご寄付がいったい何に使われているのか明確にします。
消耗品を受け取った際にも、ウェブサイト等を通じて実際に使っている様子をお伝えすることあります。
いかがでしたでしょうか。
動物病院スタッフのみなさんが、災害時におけるシェルターで活躍する姿はイメージできましたか?
大きな災害が起きたとき、動物を助けることは被災者を助けることにつながります。
シェルターワークが人も動物も、どちらも救うための良い施設となるよう、その運営に携わることができるスタッフでいられるよう、
イメージしておいていただけるとうれしいです!