公益社団法人名古屋市獣医師会

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人と動物のあたたかい共生

知っていますか?VMAT

皆さん、VMATをご存じですか?

 

VMAT(Veterinary Medical Assistance Team:獣医療支援チーム)とは

獣医師、動物看護師などで1チーム4〜5名で構成され、大規模災害や多くの傷病動物が発生した事故などの現場で活動する専門的な訓練を受けた各地方獣医師会で結成された獣医療チーム。災害時には人命救助を妨げない範囲で、初期の動物の保護・救出を行ったり、災害状況の情報収集を行います。また、避難所やシェルターにおける動物の健康管理及び人間と動物の関係を円滑にすることを主な任務とします。平時は災害発生時に備えた隊員のトレーニングや、各地域で防災講習会、市町村の防災訓練に参加など飼い主様の防災意識向上を目的とした活動をしています。

隊員は全国的に統一された教育プログラムを履修し、認定を受けます。VMATの教育プログラムおよび受講資格の認定には公益社団法人日本獣医師会が行い、各獣医師会会員および会員病院スタッフで構成されています。

 

 

 

 

※全国VMAT地図は動物環境科学研究所・所長 船津 敏弘先生のご厚意によりご提供頂きました。また、地図上の印の中には、VMATとしてではなく同様の活動で災害対策に当たっている獣医師会も含まれています。

 

 

今回は堺市の動物病院勤務、VMAT隊員で愛玩動物看護師の萱澤奈津子さんにVMATについてお話しをお伺いしました。

(インタビュー実施 令和5年12月12日)

 

 ー萱澤さんは動物病院に勤務して何年になりますか? 

萱澤:12年目になります。

 

 

 ー愛玩動物看護師として働くようになって、変わったなぁと自分で思う事はありますか? 

萱澤:国家資格化となった事で、自分の言葉や行動に今まで以上に責任を感じるようになりました。

 

 

 ー具体的にどんなシーンでそう感じますか? 

萱澤:栄養管理やご自宅でのケアに関する飼主様への指導、入院動物の看護をする時など、国家資格を取得したことで、自分の言葉や行動に今まで以上に責任を感じるようになりました。

 

 

 ー責任をもって仕事をする事は動物達への安全な看護、飼い主さんへの信頼にも繋がりますね。さて、萱澤さんは大阪府VMATに所属されていますが、VMATに参加しようと思ったきっかけや理由を教えて下さい。 

萱澤:新潟県中越地震※1を題材にした映画※2を観たことがきっかけで防災について考えるようになりました。人と動物、どちらも救うために活動したいと思い大阪VMATに入隊しました。

 

※1新潟県中越地震 2004年10月23日17時56分、新潟県中越地方を震源として発生した。M6.8。

         死者68人、避難者約10万人、住宅損壊約12万棟

※2『マリと子犬の物語』2007年12月8日に公開された日本映画。配給は東宝。

 

 ー大阪VMATには誰でも参加できるのですか? 

萱澤:現時点で大阪VMAT※3に参加出来るのは、獣医師会の会員病院に勤務する獣医師及び愛玩動物看護師のみです。

 

※3萱澤さんが所属している大阪VMATについては→ https://www.osakafuju.or.jp/vmat/index.html

 

 

 

 ー災害対策は平時の活動が重要だと思いますが、現在、平時はVMATとしてどのような活動をしていますか? 

萱澤:防災訓練や防災フェアに参加し、同行避難や平時からの備えについての啓発活動を行っています。また、定期的に開催されるVMAT講習会に参加して災害対策について情報をアップデートしたり、災害時に備えた勉強をしています。

 

 ーなかなか周知するのは難しいと思いますが、防災フェアにはたくさんの方が来場されると思います。参加者の皆さんの反応はどうでしょうか。 

萱澤:動物を飼っていない方もたくさんブースに来てくださり、同行避難が推奨される理由や避難所での生活についての説明を真剣に聞いておられました。ペット飼育者の中にも同行避難が出来ることを初めて知ったという方がおられたため、パネルや展示物を見て学んでいただき、この機会に日頃からの備えや発災時の行動についてご家族で話し合っていただくようお伝えしました。

 

 

 ー動物を飼っていない方に同行避難について知ってもらう事も大切ですね。実際に活動の中で、感じる事、大変だなと思う事はありますか? 

萱澤:地域や避難所によって、同行避難者への対応が異なることです。過去に、同行避難をしたものの動物は屋外に置いておくようにと言われ、諦めて自宅に戻る方もおられたようです。避難所の部屋数は限られています。妊婦や持病のある要配慮者も多く避難してこられるため動物はどうしても二の次にはなってしまいますが、全国的に統一された対応をしてもらえるようになればいいなと思います。

 

 

 ーVMAT での獣医師と愛玩動物看護師の役割の違いは何だと思いますか? 

萱澤:明確な役割分担などはありませんが、動物と飼主様の両方に寄り添うことが出来るのは愛玩動物看護師だと思います。日々の診療でもよくあるように、小さな悩み事や相談など、獣医師には言いにくいことでも愛玩動物看護師に話してくださる飼主様は多いです。災害によって多くのものを失い疲弊している時にこそ、私達愛玩動物看護師は動物とその飼主様にとって心の支えとなることが出来るはずです。

 

 

 ーでは愛玩動物看護師だからこそVMATとして何ができると思いますか? 

萱澤:獣医療の観点からだけでなく、しつけや基本的な病気の予防の必要性について飼主様に理解していただき、推奨していくことが重要だと考えています。そして、発災時における負傷動物の看護や飼主様の心のケアは愛玩動物看護師にしか出来ない大切な役割だと思います。

 

          

 

 ー確かに、災害時に飼い主さんに寄り添えるのは獣医師より動物看護師の皆さんの方が適しているのでしょうね。皆さんの存在が安心につながると思います。VMATが実際に活動するような事態はあって欲しくないのですが、これからVMATの一員としてどのような活動をしたいと思いますか? 

萱澤:地元での同行避難訓練や、人の医療従事者等の他職種を交えてのHUG(避難所運営ゲーム)の実施をしたいです。

 

HUGとは  H(避難所)、U(運営)、G(ゲーム)
2007年に静岡県危機管理局が企画・開発し、静岡県が著作権及び商標権を有している防災カードゲーム。

チームを組んで実際に避難所を運営する立場になり、次々と起こる問題やさまざまな課題をクリアするための対処法を考えます。具体的かつ実践的な避難所運営を模擬体験することができます。

 ーHUGは私も是非、行政と地域の方そして獣医療関係者が一緒になって体験して欲しいと思っています。さて、萱澤さんの勤務先の病院では何か日頃災害対策について取り組んでいる事はありますか? 

萱澤:大阪府獣医師会の災害時動物救護協力病院に登録しています。療法食のストックや折りたたみケージを準備し、被災した動物の受け入れ体制を整えています。

 

 

 

 ー災害対策・防災としては今後のどのような取り組みをしたいと思いますか? 

萱澤:災害時には「自助力」が重要となります。いざという時に自分と大切な動物の命を守れるよう日頃からあらゆることを想定して備えておかなければなりません。正しい知識を持ち、防災意識を高め、自助力を身につけることを多くの飼主様に指導していきたいです。

 

 

 ーそれでは、最後に愛玩動物看護師としてのこれからの目標などあれば教えて下さい。 

萱澤:国家資格を取得したから終わり。ではなく、より質の高い動物医療を提供出来るよう日々知識のアップデートを怠らず成長していきたいです。これからも変わらず今の勤務先で、地域の方々に愛される動物病院、そして必要としてもらえる愛玩動物看護師であり続けたいと思っています。

 

 

萱澤さん、お忙しいなかインタビューのご協力ありがとうございました。

益々のご活躍を祈っています❤。

 

今回は各地方獣医師会で結成されるVMATについて紹介しました。

 

防災・減災を考える時、より被害を小さくするためには平時での対策・活動が重要です。

そして、一番大切なのはまずは皆さん自身の命を守ること。

できる範囲で構いません、災害対策を始めましょう。