公益社団法人名古屋市獣医師会

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寄り添う動物看護

寄り添う動物看護⑥ ~異国で活躍する~ 

やりがいしかないの~! 

私、カンボジアで動物看護師やってます!!!

 

 

 

 第2回  

 『まだまだ パルボが蔓延しています!』 

講師 千村花子さん   

 Sunny animal Hospital(カンボジア プノンペン )

(2025年1月)

 

 

①『週に1頭はパルボ陽性』

私の住むカンボジアでは日本ではほとんど見られなくなった、パルボウイルスに感染してしまう犬猫がまだまだたくさんいます。

カンボジアに来て早々に診察に来た小さなポメラニアンがパルボウイルス陽性でした。

カンボジアではまだまだワクチン接種の重要性が十分に認知されてなく、生後2、3か月に限らずワクチン接種をしていないため、成犬の1才の犬や猫も感染してしまいます。

 

 私達の病院では平均週に1頭はパルボウイルス陽性が出ます! 

 

当院では、問診の時に1歳未満で下痢と嘔吐、食欲不振と聞いた際には、

一度飼い主さんにペットと一緒に病院の外に出てもらい、

『パルボウイルスの検査をまずさせてほしい』お願いしています。

 

パルボとコロナウイルスの簡易検査キット

 

 

結果が陽性の場合、すぐ入院治療をスタートすると同時に、

飼い主さんへ『厳しい状態が続くと思いますがベストを尽くします』と話しています。

看護も治療も試行錯誤の連続ですが、カンボジアに来た5年前より確実に救命率は上がっている気がしています。

 

パルボウイルスはとても厄介で、あくまで経験上の私が感じた事ですが、

体の大きさや月齢の他に品種によっても救命率が変わるような気がしています。

一時期カンボジアでは白い小さなポメラニアンが流行り、たくさん診察に訪れました。

パルボウイルスに感染した子も少なくなく、多くの命を失いました。

 

 

 

 

ローカル病院界隈では乾季(11月から4月)と雨季(5月から10月)の境目にパルボウイルスが増えるといわれていますが、なぜかははっきり分からないそうです。

確かにその頃には病院の感染ルームは満室になっています。

 

 

②カンボジアのペットショップ事情
   パルボウイルスが蔓延している一因に残念ながらペットショップにもあります。 

 

 ペットショップでの飼育管理は一つのケージに何匹も子犬が入っていて、衛生環境はとても良いとは言えません。 

 

カンボジアのペットショップ

※ペットショップの隣の気になるメンズの写真。

隣の床屋さんではカンボジアで流行ってる?カットスタイルの写真が並んでいます。

 

 

なので、飼い主さんの中ではペットショップの環境が悪すぎて、ショップから救ってきた(レスキューしてきた)と表現する人もいます。

 

ペットショップから子犬を迎えた飼い主さんがワクチンの追加接種をお願いします、と言って診察に来ますが、

『1,2週間まずはお家で様子を見るように。その間、嘔吐下痢、食欲不振があったらすぐに連れてきて』と伝えています。

迎え入れて5日や7日で症状が出てしまい、迎え入れたばかりなのにそのまま入院になってしまうケースがよくあります。

日本では初診の子犬の診察ではこんな方法をしていなかったですし、この方法はカンボジアでの経験から培ったものです。

 他の東南アジアの国では、偽のワクチンステッカーを大量にシール業者に頼んで作り、ワクチン手帳に貼っている悪質な行為もあるという噂もあるので、ペットショップで接種されているワクチンには注意しています。 

 

 

しかし、良質なペットショップも増えてきています。

お店の子犬や子猫を診察に連れてきてくれますし、私たちも往診を行っています。

そのタイミングで ペットショップのスタッフと意見交換を行い、ワクチン接種や衛生管理の重要性を伝えています。 

 

 

当病院 SUNNY ANIMAL HOSPITALのワクチンブック

 

 

 

また、私たちは一般診療の他に飼い主さんへの啓蒙活動もとても重要だと考えています。

カンボジアでの当院が行っているTiktokやインスタなどのSNSを利用した情報発信についてもこれからお話したいと思います。