人と動物のあたたかい共生
もっと知ってほじょ犬 Part1
~身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)について~
公益財団法人日本補助犬協会 代表理事 朴善子(ぱくよしこ)
平成14年に身体障害者補助犬法が施行され、
目の不自由な方の歩行のサポートをする「盲導犬」、
身体の不自由な方の生活のサポートをする「介助犬」、
耳の不自由な方に音を知らせる「聴導犬」
が補助犬として認められました。
1.補助犬を育成する団体には良質な補助犬の育成と指導を義務付ける。
2. ユーザー(補助犬使用者)には補助犬の適切な行動と健康管理及び衛生管理を義務付ける。
3.公共施設・交通機関、スーパー・飲食店・ホテル・病院や職場などで、補助犬同伴の受け入れを義務付ける。
〈身体障害者補助犬法の目的〉
良質な身体障害者補助犬の育成及びこれを使用する身体障害者の施設等の利用の円滑化を図り、もって身体障害者の自立及び社会参加の促進に寄与する。
~身体障害者補助犬法の問題点~
上記の通り、商業施設や交通機関での補助犬の受け入れは法的義務ですが、全国での補助犬の実働数が949頭(令和5年4月)と少ないこともあり、補助犬及び補助犬法の認知度は非常に低い為、補助犬の受け入れ拒否等の社会問題が後を絶たない現状があります。
全国の補助犬実働数は1,049頭(令和5年4月)で、ここ数年の実働数は減少しています。
(2)補助犬育成事業者の財政面の不安定さ
(1)補助犬受入れ体制の不整備
ユーザーにとって、社会の補助犬受け入れ態勢が整っているかどうかは深刻な問題ですが、それは十分ではありません。そこで、補助犬ユーザーへの対応をご説明いたします。
街で補助犬に出会った時、補助犬は仕事中です。補助犬の気を引くような行為(補助犬に話しかける、触る)は控えてください。
また、写真や動画を無断で撮影することもプライバシー保護の観点から控えてください。
もし、補助犬ユーザーが困っているようであれば、「お手伝いすることはありますか?」、と声を掛けていただければ大変助かります。補助犬ユーザーから「何かあれば周囲の方が気軽に声を掛けてくれて安心する」という話を伺います。
●盲導犬ユーザーは、視覚による確認が難しいので、盲導犬の状態の説明を詳しくお願いします。投薬などもご本人と話し合いながら可能な方法をご検討ください。
●聴導犬ユーザーの中には「口話」といって口の動きで会話の内容を読み取る方も多くいます。マスクをしているとこの方法がとれませんので、マスクを外して会話をお願いします。また、紙に要点を書いていただくことで、確実に伝えることができます。
●介助犬ユーザーは、車椅子を使用している場合が多く、医院に入るための小さな段差が障害になる場合があります。簡易のスロープを準備していただくか、スタッフの方に段差移動の介助をお願いできればと思います。
(2)補助犬育成事業者の財政面の不安定さ
補助犬を1頭育成するのに500万円ほどの費用が必要ですが、公的支援が十分ではなく、補助犬育成、訓練にかかる費用の9割以上は企業や個人からの寄付金に頼っているのが現状です。
補助犬を希望する身体の不自由な方が、公的支援(居住する都道府県の補助犬給付事業)を申請しようとしても、多くの都道府県ではその対象者を、重度障がい者に限定しています。盲導犬希望者の場合は、障がい者手帳1級の全盲もしくはそれに準ずる方。介助犬・聴導犬希望者の場合は、障がい者手帳1・2級の方で、その他の方々は対象となりません。
海外では、補助犬ユーザーの障がいレベルは様々で、ロービジョン(視機能が弱く矯正もできない状態)の方や難聴の方も積極的に盲導犬や聴導犬と生活をしています。
~補助犬の同伴避難、ペットの同行避難~
東日本大震災で被災した介助犬ユーザーと車いすを利用する少年
災害時、私たちは避難所へ向かいます。
補助犬の場合は、身体障害者補助犬法で同伴避難が認められていますので、ユーザー(補助犬の飼い主)と同じ空間で寝食を共にすることになります。
犬だからといって、ペット犬の同行避難と同じ取り扱いをしないようにしてください。
補助犬はユーザー(飼い主)と同じ空間で過ごすことができます。
その際、犬の苦手な方やアレルギーのある方がいる場合は、それ其れの空間を離すなどの配慮をお願いします。
補助犬と避難される方は、視覚・聴覚・肢体等に障がいのある方ですので、皆さんと同じように情報を得ることができない場合があります。
目の不自由な方へは、周りの状況などを言葉で説明する
車いす利用者にはバリアフリー対応の避難所に移動いただく等
補助犬の排泄の方法は様々です。
先ずは、ペットシーツを利用するのか?
屋外で排泄できる場所があるのか?
などを、運営側と話し合っていただけると助かります。
次回に続く
~日本補助犬協会について~
公益財団法人 日本補助犬協会は、日本で唯一、盲導犬、介助犬、聴導犬の3種類の補助犬を育成・認定できる団体として2002年から活動をしています。
3種類の補助犬はそれぞれ役割が違い、犬の適性や、訓練方法が異なります。またユーザーである視覚障害者、肢体不自由者、聴覚障害者への専門的な対応が必要となり、3種類を1団体で育成することは容易ではありません。
しかし、専門家がそれぞれの高いスキルを持ち寄り、経験豊富な盲導犬・介助犬・聴導犬の訓練士が繋がることで、育成が可能となりました。
例えば候補犬の評価を行う際、1頭の犬を盲導犬・介助犬・聴導犬の3人の訓練士が評価します。
その犬の可能性を偏りなく見ることで、ユーザーとのベストマッチングを導き出します。できる限り多くの方の元で補助犬が活躍できるよう効率の高い育成を行っています。
これまで私たちが育成してきた3種類の 補助犬数は116頭、認定数は他団体の育成犬を含めると144頭となりました。
TEL:045-951-9221 FAX:045-951-9222